6月2日に杉並公会堂で開催。
今回のSwing Is Here!の統一テーマはミュージカル。このテーマを選んだ最も大きな理由は、"September 11"、あの9月11日のニューヨークの出来事。そのわずか2日後に貿易センタービルから少し北に位置するブロードウエイの大半の劇場でミュージカルの公演が再開され、そこに市民が事件の恐怖を語りながらも行列を作っている姿をテレビのニュースで知った。悲しみに耐えてじっとしているよりも、一刻も早く再建に向けて立ち上がる強いアメリカを示す象徴的な映像でもあったが、そのようなプロパガンダ的なことよりも、ミュージカルというものがいかにアメリカの、そしてニューヨークの人々にとって中心的なエンターテインメントであるかということを認識した。
そのミュージカルと、「20世紀アメリカの産んだ最高の芸術」であるジャズはその歴史において常に共存共栄の関係にあったと思う。ジャズそのものを題材にしたり、音楽のスタイルにジャズを使ったミュージカルが沢山あり、その逆にミュージカルの音楽作品をジャズにアレンジした例は無数にある。ジャズという音楽の柔軟性、発展性からすれば当然のことだろう。
というわけで、今回のSwing Is Here!では、何が起こっても止めることは出来ない、"Show must go on !"という生身のエンターテイナーの精神に敬意を表しつつ、数々のミュージカル作品に使われた不滅のメロディをビッグバンド流に"Bigband's Way"で表現する企画として、各バンドのプログラムを構成した。
Big WingのMusicalからの選曲は
「My Fair Lady」からOn The Street Where You Live、
「Very Warm For May」からAll The Things You Are、
「West Side Story」からSomewhereの3曲。
今回は毎年利用するセシオン杉並を確保できなかったため、杉並公会堂で実施した。
客席数600名弱のホールでは毎年立ち見のお客さまが出るイベントに成長したので、1088席の杉並公会堂に挑戦するには良いタイミングだった。
ところが合同コンサートを行なうにはいくつかの問題があった。
その一つは、楽屋で大きな音を出すと周辺の民家と舞台に音が漏れてしまうこと。
それは会場近くのレンタルスタジオをコンサートと平行して確保し、各バンドが順番にウォーミングアップ、リハーサルを行なってから楽屋に入ってスタンバイする方法で解決した。
更に、杉並公会堂を利用する上で大きな賭けとなったのは、1088席のホールでいつものように生音を基本とするサウンドをホール全体に届かせることが可能か、ということだった。
杉並公会堂の使用を決定した時点では客席の奥行きが深いため、すべての楽器に1本づつマイクを付けるPAを導入せざるを得ないとの意見があった。
いくつかのコンサートを見に行った結果、どこでもPAが音楽を、そして演奏者の意図していたはずのサウンドを見るも無惨に破壊し、聴衆に音楽ならぬ音圧を押し付けている現実を実感した。
その解決策として、クラシック系の演奏には必ず用いる響き板をBig Band Jazzに用いるという異例の手段を試みた。
上の写真の波状のバックスクリーンは響き板の木目そのものだ。響き板は舞台の後部だけでなく天井、両側面にも設置するので楽器の音はそれぞれに反射する。音量の減衰が少なくなると共に、聴衆には生の音と反射音が混ざって聞こえるため、バンド全体のサウンドがミックスされた豊かな響きとなって聞こえる反面、楽器の位置関係や細かいフレーズがシャープに伝わり難くなる。エコーの掛かり過ぎたカラオケのようなものだ。
杉並公会堂の係の方はBig Bandで響き板を使った事は無いと言う。しかしPAはリズム楽器とソロ、ボーカルだけに使いたい。結論は当日の昼からのリハーサルで判断するしかなかった。
結果は、もし次回も杉並公会堂を使うとすれば、無条件で響き板を使う。今後も生の音をお客さまに聞いて頂くために妥協しない。ということが再確認出来たという報告で締めくくりたい。
総合司会 はJazz評論家の瀬川昌久氏とJazz通の岩倉千賀子さんのコンビ。瀬川氏はジャズ評論の他に月刊ミュージカル誌の編集長でもあった。この企画を検討してから知ったことだが、冒頭にも書いたようにJazzとMusicalの関係の深さの現れだろう。
今回のゲストにはミュージカルと言えば歌がなければ、という皆様のために、ベテラン女性ボーカリストの鈴木史子さんと話題の"熟年"男声コーラスグループ、"The Oz Sons"を迎えた。Oz SonsのコーラスにはBig Wingがバックの演奏をつとめた。
PianistはOz Sonsのコーラスアレンジを担当しているプロの大原江里子さんに入って頂いた。
GuitarにはMondaynight Jazz Orch.の青木文尚さんが参加して迫力のSoloを聞かせてくれた。
鈴木史子さんはPiano Trioで「Sound Of Music」からMy Favorite Things、「Oh,Kay!」からSomeone To Watch Over Meを唄った。
その後のOz Sonsとのコーラスでもその歌声と容姿をもって数百人の男性ファンが増えたに違いない。
BW以外の連盟各バンドのPick UpしたMusicalがRootsのProgramは
"Over The Rainbow", "New York, New York","'Swonderful","It's Only A Paper Moon",West Side Story Medley", "Ain't Misbehavin'","Honey Suckle Rose"という構成だった。
チケット入場者数は730名を記録し、過去最多となった。100名を超える出演者も久し振りに他のバンドの演奏を座席で見ることができた。
毎年お客さまにお願いしているアンケートの集計結果を紹介すると、回答数117票で、毎年のことだがその50%以上が初めての来場者の新鮮な感覚での感想という特性がある。
回答者の「年齢層」は、40-50歳の社会人が40%、60歳以上が27%、30歳以下の社会人が25%。
「ビッグバンドを聴く頻度」は、時々が47%、良く聴くが32%、初めてが16%。
以上のプロフィールで、「総合評価」として大変良かったが51%、良かったが32%、無回答15%。
「ビッグバンドに所属の有無」は、していないが83%、しているが8%。
そして注目の「最も楽しかったバンド」は、Big Wing :26.5%でトップ、多謝! Mondaynight :20.5%、他は17%台という結果だった。
|